home / トピックス / 祥洲の墨の世界 / ロゴデザイン / 会報誌翔Sho / 京都・東京教室 / プロフィール
topics MacFan 特集 林檎職人 Sumi Artist 祥洲
back

書家祥洲 MacFan 掲載記事

モノクロームへのこだわり
Mac Fan 2005.5月号 (毎日コミュニケーションズ)
林檎職人特集掲載記事


今回の林檎職人・祥洲氏は書家である。しかし、その活動ぶりは
従来の「書家」のイメージには収まりきらない。祥洲氏は大学在
学中の19歳でプロの書家としてデビューし、数々の公募展でも入
賞。その後、20代半ばで日本の書道界を飛び出し、現在では中国
やヨーロッパでも高い評価を受けている、有数のアーティストだ。
その一方で、やはり19歳の頃から独学で写真にも傾倒してきた。


「僕はモノクロームにこだわっているんですよ。墨を自分で作って
いるのもそのためです。白と黒とのせめぎ合いの中にある、緊張感
の美しさですね。どちらも結局は、自分が美しいと思うものだけを
作ってきているんです。人がどう感じるかというよりも、まず自分
の美を追いかける」


そんな中で、祥洲氏はMacに出会った。
現在は書と写真という2つのフィールドにまたがり、Macを使って
独自の作品を発表している祥洲氏だが、その時点では、まだ自分の
作品制作に使うつもりではなかったそうだ。


「級とか段とかを発表する雑誌、競書誌というんですが、その競書
誌といったものではない、自分の理念に基づいた冊子を作るために
Macを導入したんです」


いざ購入したら、すぐハマってしまった。最初の3カ月は仕事もせ
ずにひたすらMacを触り、4ヶ月目には自分で冊子を制作するま
でになった。その頃には、すでにMacで作品を作る可能性につい
ては考えはじめていたそうだが、まだマシンパワーも足りず、また、
単純にMacを使って何かを、ということはやりたくなかったのだ
そうだ。


伝統とデジタル

「なぜマックなの、なぜデジタルにするのっていう部分を大事にし
ないとダメなんです。やはり書は、生が一番だから、デジタルにす
るならば、違う完成形を探らなければならない。僕の書風はアバン
ギャルドとかいわれるけど、むしろ古典派なんです。受け継いでき
たものを大事にしながら、今の時代の中に伝統を活かしたいんです。
そこにデジタルの可能性があると思うんですよ」


写真作品についても、いわゆる暗室作業をデジタルに置き換えた使
い方をする時が多い。むしろ、Macの利用は、前述の冊子作りの
ほか、ホームページの作成や展覧会の案内葉書の作成。さらには自
身の作品集のデザインや書を素材として使ったパッケージデザイン、
チラシ、看板製作、といった分野が中心だ。「作品展や写真集用に
自分の書を撮影にするにしても、ほかの人が撮ると別の感性になる。
だから自分でやりたいんです。作品を作る時から、DM/チラシ/会
場の展示方法や音楽など全部を自分でやりきりたいんですよ(笑)」


すべてを自分でコントロールする、その補助のためのデジタル。そ
うしてMacを使っている間に、アイディアが生まれて形になって
いく。それが、書と写真が融合した祥洲氏独自の表現になる「痕跡
と変容」シリーズだ。


新しい表現としての墨と写真

「書というのは、墨だけじゃないんですよ、筆とか、紙とかさまざ
まな要素が絡んで、そこに表現が生まれます。それはライフワーク
ですよね。僕自身は『書』が一番。でも、同じくらいの比重で、墨
の可能性も探りたい。そこで、デジタルを使おうと思ったんです」 


だから、「痕跡と変容」シリーズには「文字」はない。墨の濃淡と
白黒写真の濃淡が一つの作品の中で融合する。それが作品として完
成するまでには、かなりの時間と試行錯誤が必要だったそうだ。
例えば、このシリーズでは小さく書いた書をスキャンし、拡大して
使う。それは、書の伝統からヒントを得た手法。お手本となるよう
な古い書は、どれも小さな文字で書かれている。それを大きく拡大
したものを手本に、細かい部分の美しさを練習する。小さい物を拡
大した時に、違う美が生まれるという、書の伝統的な発想を、デジ
タルの力を借りて現代の作品として再構築したのだが、それだけで
は、単なるアイディアにしか過ぎない。


「ただ、墨と写真を合成するというだけなら、誰でも出来るんです
よ。でも、それだけでは自分の表現にはならない。それに、僕はア
マチュアではないので、プロとしてのクオリティになるまでずっと
隠して隠してやってきたんですよ。それでも、なかなか納得できる
ものが作れないんです。初期の作品では、まだ写真が前に出ていま
すし。最近の作品で、どうにか自分がやりたいことが表現できたと
思うんですが、それでも1年に1点から2点しか発表しても良いと
思えるものは作れません」


2年先の「根」

そんな風に自作のクオリティにこだわる一方で、書を素材として提
供する仕事では、相手に任せているのだという。そうやって行った
仕事の一つに、iPod用のホイールシールがある。白いiPod
に祥洲氏の書が映える、ほかに類のない作品だ。


「無茶苦茶難しかったんです。ホイールの真ん中だけ抜けるでしょ
う。それでいて文字が完成しないといけない。難題でしたよ」


新たな表現の形も、今は祥洲氏によるお手本ができている。しかし
祥洲氏は何もないところからそれを作り上げた。


「今考えていることは、たぶん2年くらい先にやりたいことです。
今これがあるから、次はこういうことをしたい。ならば何が必要か
を考えて、それを練習するんです。日頃は模写を一生懸命やる。
それが根っこにないと、新しいことも偽物になってしまいます」



取材・文 納富廉邦氏
写真 黒田彰氏
毎日コミュニケーションズ「Mac Fan 2005,5月号」より

back